先週、第76回会津総合美術展に行ってきました。

今回は、H先生からいただいた招待状を使っての入場でした。(H先生は、昨秋のアートイベント
「なかにわ美術館」で再会した中学時代の恩師です。先生ありがとうございます。)

会場内は、すべての作品の写真撮影、SNSへの投稿・シェアもOKでした。

会場内の雰囲気を紹介しましょう。




すごく当たり前のことなのですが、会場内の写真って、どう頑張ってもどなたかの作品が変なところで切れてしまいますね。
帰宅後、自分が撮った写真を眺めながら、皆さんの作品に申し訳なくて、ちょっとモヤモヤしました。


私は相変わらず、芸術の技法や良し悪しが全くわかりません。ですが、会場内に並ぶ多くの力作に、びっくりするほど心が揺さぶられました。
ちなみに、第74・75回の会津総合美術展は、コロナ禍の影響で中止だったそうです。
そのせいなのか、会場のいたるところで、抑圧されたエネルギーの静かな爆発が起きていると感じました。まさに、熱風を何度も浴びました。
一方で、丁寧で緻密で線や点などを見る度に、自分の仕事の雑さ・稚拙さに気付き、「あぁ、私は全然ダメだなぁ。(穴があったら入りたい)」と、激しく打ちのめされながら会場を2周した次第です。
ぜんぶで2時間ちょっと鑑賞したと思います。
最後に、先生のいらっしゃる事務局で、正直に「打ちのめされた」という話をしました。
すると、大先輩の皆さんも「出品→(客観視で)打ちのめされる→復活→再びつくる…」を繰り返しながら活動されていることを、教えていただきました。
とても安心しました。ありがとうございます。
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そういえば、会場内で「果物」が描かれた何枚かの作品を見ていたら、十数年前に交流していたある作家さんのことを思い出しました。「元気にしてるかな?」と思いました。
その方は、美術大学への進学が叶わず一般企業に就職されたのですが、生死に関わる大病をされて重度の身体障害者になりました。
いま、彼の身体は、全身の2割ぐらいしか動きません。しかし、そんな彼は、「果物とワイン」などの油絵を描き続ける画家になっています。
人生いろいろと言いますが、夢へのそういう辿り着き方ってあるのだなぁと思いました。ネット検索したところ、少し前にも個展を開かれたようです。
重い障害がある彼は、自宅でしか制作ができません。そのため、私とやりとりしていた十数年前も、よく「果物などのモチーフがほしい」と言っていました。
当時の私は、モチーフという言葉だけでなく、そもそも絵を描くことに何の意味があるのかよくわかりませんでした。ですから、モチーフを探す・送る余裕はあったものの、彼の話をいつも聞き流していた次第です。
でも最近は、描くことの大切さが少しわかってきたので、またどこかで彼とつながれたら、モチーフとして会津の何かを送ってあげようと思いました。
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帰りにあるお店に立ち寄ったところ、仲良しの店員さんが、私のバッグに入ったパンフレットを見つけました。そして「あら、どこかに行ってきたの?」と声をかけてきました。
招待状をもらって美術展に…と話したら、「あら、いいこと~!」と。
しかし、そのあと、「あたし、美術展って何が良いかわからないんだけど、あれって何がどうだと良いわけ?」と聞かれました。
返答に困りました。この話にオチはありません。
店員さんも忙しそうだったので、何も言わずに帰ってきました。
実は私も、2018年頃までは、ときどき友達に連れられて展覧会に行くものの、「何が良いのかわからない(つまらない)」と思いながら会場内をウロウロしていた記憶があります。
ですから、その店員さんがおっしゃる「何が良いのかわからない」という感覚がとてもよくわかるのです。
しかし、そんな私も近年は、展覧会などによく行くようになりました。でも、絵画などを見てゾクゾクする一方で、未だに「何が良いのか?」はよくわかっていません。
ちなみに、先日読み終えたカミュの「異邦人」も、最後は感極まって大号泣したものの、何が良いのかわかりませんでした。

ただ、私のなかでは、「良くてもあえて言葉にしたくないもの」も結構たくさんあるのだろうと思います。
では、私の展覧会に対する印象が「何が良いのかわからない(だから面白くない)」から「何が良いのかわからない(でも面白い)」に変わったきっかけは何なのでしょうか。
それは、私自身の「人への興味・関心」が高まったことが関係しているのではないかと思います。
なかにわ美術館の記事でも少し触れましたが、人生を楽しむうえで大切なのは、芸術や商品、サービスといったさまざまな対象の背景にある「つくる人」を想像することだと、個人的には思っています。
野菜でいえば、「生産者の顔を想像する(生産者が見える)」ってやつです。
例えば、お店で食事をするときに、美味しいサラダを考案したシェフ、素敵なお皿を焼いた陶芸家さん、野菜の生産者さん……などに想いを馳せると、そのメニューに数倍の奥深さが生まれます。
世の中には、芸術作品のほかにもさまざまな物があります。それらの大半は、人々が汗水垂らして作ったものです。
そういう人たちの苦労・発想・感性・価値観・人生などに興味を持つと、不思議と「よくわからないけどスゴい・面白い」に変わるのだろうと、最近思うようになりました。
そんなことから、「芸術作品への興味・関心・受容」は、実のところ「人への興味・関心・受容」とつながっているのだろうと感じています。

今回は、268点の作品を通して、「会津でもいろんな人が頑張っているんだなぁ。私も頑張ろう。」と感じることができました。凹みながらも前を向くって、何かを続けるうえで大切だと思います。
継続は力なり。私もGW後半から、集大成に向けてギアを上げていきたいと思います。
H先生、会津美術協会の皆さん、ありがとうございました。
●第76回 会津総合美術展
●会場:福島県会津若松市城東町14?52
●開催期間:2022年4月17日~24日
●時間:9時~17時30分(最終日の入館は15時半まで)
●入場料:一般300円、高校生以下は無料